主張モジュールの機能
5.2 主張モジュールの機能
主要モジュールの機能①
SAPシステムは、FI、CO、FSCMといった専門的な会計モジュールを提供しています。
その中のFIとCOを見ていきましょう。
財務会計(FI)モジュール
FI(Financial Accounting) は、財務会計を行うモジュールです。
財務会計とは、会社が外部に向けて管理する会計(株主、税務署など)
となります。
この財務会計上の会計情報をもとにして、財務諸表を作成します。
サブモジュール
サブモジュール
FIモジュールは複数のサブモジュールで構成されており、それにより
債権、債務、固定資産といった補助元帳の要件にも対応しています。
1.総勘定元帳 (FI-GL)
全ての取引が記録されます。
日々の取引を仕訳として登録し、勘定ベースで管理を行います。
2.債権管理 (FI-AP)
全ての得意先の会計データが記録されます。
販売を行う取引に対して、債権計上、請求書発行、
入金と債権の消込を行います。
3.債務管理 (FI-AR)
全ての仕入先の会計データが記録されます。
購買を行う取引に対して債務計上、支払を行います。
4.固定資産管理 (FI-AA)
固定資産として計上する資産の管理を行います。
固定資産税の申告にかかる処理を行います。
ほかにも、銀行関連会計(FI-BL)、特別目的元帳(FI-SL)なども
用意されています。
モジュール内の連携
先のモジュール間の連携にて、
SD(販売管理)やMM(在庫/購買管理)など他モジュールから
FI(財務会計)やCO(管理会計)へ会計データが連携される件は
説明した通りです。
今回は、FIモジュール内でどのような連携がされるのか
見ていきましょう
サブモジュールで伝票が登録されると、総勘定元帳にもデータが自動で登録されます。
では、何のためにサブモジュールで登録したデータがGL(総勘定元帳)にも連携が必要なのでしょうか?
例)仕入先から原材料を買い、支払いは後日(掛け)とする取引を
登録する場合
AP(債務管理)では、
仕入先との購買の取引を行ったため、APにて伝票を登録します。
その際、仕入先から原材料を掛けで買ったために、
後日、支払う義務があり
どの仕入先に?いくら?いつまでに?などの情報管理が必要となります。
<仕入先元帳(補助元帳)>
一方、GL(総勘定元帳)では、
最終的に貸借対照表(B/S)が表示できればよいので、
どの仕入先?いつまで?を管理する必要がなく、
掛けで買った金額=買掛金がいくら残っている?だけわかれば良いのです。
<総勘定元帳>
ひとつの取引でも、
管理する目的が異なるため元帳をわけ、それぞれで必要な情報を管理しています。
ただし、あくまで元はひとつの取引の為、整合している状態が必要であり、
ERPパッケージでは自動でデータが連携されるようになっているのです。
会計の組織
財務会計で一番重要な組織として、会社コードがあります。
会社コードは、独立した法人等の法的会計管理を行う単位となります。
法的に必要とされる財務諸表(B/S、P/L)は、
会社コード単位で作成されます。
SAPのERPパッケージでは、複数の会社コードを持つことができ、
それにより複数の会社のデータが混じる事なく管理されるのです。
たとえば、○○グループ企業にて同じSAPを利用する場合などがあり。
会計単位を会社コードで分けます。
管理会計(CO)モジュール
CO(Controlling) は、管理会計を行うモジュールです。
管理会計とは、FIとは異なり会社の内部に向けて管理する会計となります。
経営者や管理者は、通常、この管理会計上の会計情報をもとにして、
業務分析や意思決定を行います。
サブモジュール
サブモジュール
COモジュールは複数のサブモジュールで構成されており、それにより
業務分析や管理部門が意思決定を行うためのツールが用意されています。
1.原価要素会計 (CO-OM-CEL)
原価要素を用いて、組織で発生した原価と収益の概要が把握できます。
原価と収益のデータがFIから連携され、FIとCOの金額照合にも利用。
2.原価センタ会計 (CO-OM-CCA)
原価センタを用いて、組織内のどこが原価の発生源か把握できます。
原価センタを製造部門や管理部門、人事部門など組織に割り当てます。
3.製品原価管理 (CO-PC)
製品の製造原価やサービス提供にかかる原価(計画、実際)の
見積りを行い、製品の標準単価を設定します。
製造指図により製造される製品については、
実際にかかった原価を投入する事で差異を
計算(製造原価差異)することができます。
ほかにも、利益センタ会計 (EC-PCA)、収益性分析(CO-PA)等
意思決定を行うための多くのツールが用意されています。
主要モジュールの機能②
SAPシステムは、MM、PP、SD他といった専門的なロジ系モジュールを
提供しています。
今回は、その中のMM 、SD、PPを見ていきましょう。
ロジ系(MM)モジュール
MM(Material Management) は、在庫/購買管理を行うモジュールです。
■主な機能
MMモジュールは主に、購買管理機能と在庫管理機能とで構成されます。
1.購買管理機能
原材料や固定資産、外注サービスなどの購買依頼、発注、
入庫時の伝票起票、仕入計上(仕入先ごとの買掛金計上)
などのプロセスの管理を行います。
✓購買依頼→見積依頼→購買発注→入荷→請求書照合
2.在庫管理機能
在庫の入庫/出庫などの受払(受入/払出)の記録、また在庫の金額や
数量などの会社として資産管理する現品の管理を行います。
✓在庫の受払
✓実施棚卸処理
倉庫にある在庫を数え、記録と一致するかチェックします。
✓在庫評価
在庫金額は、評価の計算方法により金額が変わってきます。
各会社はその計算方法を決めて評価します。
期中:移動平均原価、標準原価
期末:総平均法、移動平均法、先入先出法、後入後出法、個別法
ロジ系(SD)モジュール
SD(Sales & Distribution)は、販売管理を行うモジュールです。
■主な機能
SDモジュールは主に、販売管理機能で構成されます。
1.販売管理機能
製品の販売や、サービスの提供などの見積、受注、出庫時の伝票起票、
売上計上(得意先毎の売掛金計上)などのプロセスの管理を行います。
✓引合→見積→受注→出荷→請求(=売上計上と考えてください)
ロジ系(PP)モジュール
PP(Production Planning)は、生産管理を行うモジュールです。
■主な機能
PPモジュールは主に、生産計画機能と生産管理機能とで構成されます。
1.生産計画機能
製品を製造する前に、所要量(いつ、何が、何個必要か)を基に生産計画を立てます。
✓基準生産計画
需要予測、SD受注データを基に、基準となる生産計画を登録します。
✓MRP(資材所要量計画)
生産計画に基づき、製品作成に必要な原材料の所要量を計画します。
✓購買依頼の登録
MRPの実行結果に基づき、必要な原材料の購買依頼が
自動登録されます。
✓製造指図生成
MRPで生産計画を立てると、工場で作る製品の製造指図が発行されます。製造指図とは、製品を作るための指示書です。
(原材料、作業場所、作成手順、かかる時間、かかる費用などが
この指示書に反映されて、原価計算で使用されます。)
2.生産管理機能
製品の製造が始まると、製造指図で管理が行われます。
✓実績の投入
製造工程作業が完了すれば、消費した原材料や消費した
作業時間を指図に登録します。
✓製品の完成
製品が完成すると、完成品を製品在庫としてMMに登録します。
主要モジュールの機能③
簡単ですが、SAP社のERPパッケージに用意されているモジュールを
いくつか見てきましたが、どうでしょうイメージは沸きましたか?
ABAP言語で、ソースをただ書く(=命令の羅列)にあたっては、
モジュールの知識はほとんど関係はありません。
ただ、SAP標準のモジュールをしっておくと、
自分が作成するプログラムが、どのような業務の中で、どうしてアドオンとして追加開発するに至ったのかを理解できます。
理解して作るプログラムは、非常に品質に優れたものとなります。
少しずつでも、SAPについて理解を深めていきましょう!!